表現の自由をめぐる画期的判決ーやじ排除に賠償命令

【北海道に計88万円の賠償命令】
 先週25日、札幌地裁で近年稀にみる判決が出された。事案は、3年前の参議院選で札幌駅前で安倍首相(当時)の街頭演説中の男女2人のヤジに対する警察の排除が、憲法が保障する表現の自由を侵害したとして道に対し計88万円の支払いを命じたというもの。

 近年の憲法に関連する判決で、これほど基本的人権を重視した判決が出されるのは異例で、高く評価したい。

【警職法に基づく適法な行為と主張も】 
 応援演説中に、男性(34)は「安倍辞めろ」とヤジを、女性(26)は年金問題に触れた演説に「増税やめろ」と声をあげて、警察官に囲まれ腕をつかまれその場から排除されたもの。

 現代ではテレビニュースなどで現場を撮影した動画が沢山あり、それが判決の判断に大きな決め手となった。

 訴えに対し道警側は、原告らが聴衆に危害を加えられるなどの恐れがあったからで、警察官職務執行法に基づく適法な行為と主張。

 これに対し判決では、原告らが声を上げ始めてから「わずか10秒程度」で排除されたのは「表現行為そのものを排除しようとしたと推認せざるを得ない」として、「警察官の行為は原告の表現の自由を制限した」と結論付けている。

 安倍辞めろ、増税反対などは、いずれも公共的・政治的事項に関する表現行為だ。警察官の行為は原告らの表現行為が安倍氏の街頭演説の場にそぐわないと判断して制限、または制限しようとしたと推認せざるを得ない、と断ずる。

 そして「原告の表現行為は、差別の意識や憎悪などを誘発せず、犯罪行為を扇動するものでもなく、演説自体を事実上不可能にさせない。原告の受けた制限が、公共の福祉により止むを得ないものであったなどと解することは困難だ。表現の自由は、警察官によって侵害された」と認定している。

【「演説を妨害し」に該当せず】
 北海道警は、公職選挙穂法225条2号の「演説を妨害し」に当たる可能性を説明したようだが、法は暴力がからんで、演説者を拘束したり、押さえつけたり、演説者をつるし上げ演説できなくさせたとか、スピーカーなどの大音量で誰も演説が聞き取れないというような状況を予定しているが、当時の動画は全くこれに当たらなかった。

 判決は言う。「表現の自由は民主主義の基礎となる重要な権利で、特に政治的な事柄に関する表現の自由は重要な憲法上の権利として尊重されなければならない」との大原則を掲げる。そして「2人の表現の自由などが違法に侵害された」と断じた。

 裁判所で出世のために上ばかり見て判決を書く裁判官が多いと法曹界で嘆かれることが多いが、その反対極に位置するのが今回の判決である。今後の裁判官の出世を心配するのは私だけではなかろう。

 判決のテレビニュースで、弁護団が裁判所の外に走ってきて支援者に示した勝訴の布に思わず笑ってしまった。「違憲」という文字が手書きされていて、判決でこれほど憲法判断をはっきりされるとは弁護団も事前に予想していなかったのだろう。

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