首相の大坂城エレベータ発言騒動

【G20の夕食会でスベる】
 G20の夕食会のニュース映像を見て私はあっけに取られた。世界の注目の中、議長を務めた首相の夕食会でのスピーチでだ。

 「150年前の明治維新の混乱で大坂城の大半は消失しましたが、天守閣は今から90年前に16世紀のものが忠実に復元されました。」「しかし、一つだけ大きなミスを犯してしまいました。エレベータまでつけてしまいました。」

 本人はジョークのつもりで、「忠実に再現したが、エレベータは四百数十年前にはなかったのに」とでも言いたかったのだろう。心の中は伝統的な城にエレベータは似つかわしくない、という思いがあったはずだ。

 ワッと爆笑を期待したのだろうが、会場内はシーンと白けた雰囲気だったようだ。その後国内外からバリアフリーの観点から沢山の批判が上がった。

 7月2日になって、萩生田幹事長代行を通じて「取りようによっては、障害者や高齢者に不自由があってもしようがないと聞こえるかのような発言をしたことは、ちょっと遺憾だ」と発信した。

【大坂城は】
 大坂城は豊臣秀吉により1598年に築かれる(豊臣大坂城)。しかし大坂夏の陣で焼失する。

 その後徳川秀忠により1629年、少し違う場所に天守が再建される(徳川大坂城)。1665年落雷により天守が焼失。

 1868年鳥羽・伏見の戦い後、大坂城にいた慶喜が江戸に逃れたため、新政府軍に明け渡され、混乱の中出火しほとんどが消失した。 

 1931(昭和6)年に、天守閣が鉄骨鉄筋コンクリート造で復興され、エレベータも5階まで新設される。「16世紀のものが忠実に」ではない。1997年に平成の大改修を行い、エレベータが8階まで延伸される。

【「大きなミス」はエレベータではなかった】
 センスなくスベったジョークを、言葉尻を捉えて論うつもりはない。

 きっと自分で考えたのではなく、スピーチライターが作ったものを得意げに読んだのだろう。ただ、事前に読んで推敲したはずなので、その時にバリアフリーに気付かなかったのは政治家としていかがなものだろう。

 更に、萩生田幹事長代行を通じての「遺憾だった」には驚いた。日本語では人を批判するときに「遺憾である」とは言うが、自分の発言に「遺憾」とは言わない。スピーチライターの書きぶりに「遺憾」とつい言ってしまったようにも思える。

 「コンクリートで造ったのはミスだった」というならまだ笑いを取れたかもしれない。「90年前にすでに日本はバリアフリーを考えエレベータを設置しました」と言えば、拍手のひとつもあったかもしれない。

 天守閣の北川館長によると、大坂城は、休日には8千人を越える来訪者があり、エレベータは、高齢者や車いすの来館者も多く重宝されているという。「我々は大阪城のエレベータに誇りを持っており、世界中に愛されている。」

 ネットでは「高齢者や障害者のために富士山にもエスカレータをつけろというのか」など極論が飛び交い、また近隣の修復中の名古屋城では、エレベータの設置の可否で大論争中ではある。

 文化庁の史跡整備方針は、「史跡の本質的価値を保ちながら活用する方向にあり、健常者だけでなく車いすの利用者、子連れの人など、すべての人が平等に体感できるように整備」を進めているという。

 世界遺産も同じで世界の流れ。本質的価値を損なわない範囲で、沢山の人が感動を共有できるのが令和の観光ではないのだろうか。

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