呆れた官庁の「障がい者雇用の水増し」

【実際は半数以下】
 悪質なバー・スナックなどでは、日本酒などで酒瓶の中に水を入れて薄めて利益を上げるという。客は酔っているので、味など分からない、ということだ。

 今回中央省庁で、障がい者の雇用数が水増しされていて、法定雇用率をクリアしているように偽装していた。酒瓶に水を入れて薄めるのではなく、水の中に酒を入れるという話だ。財務省の公文書偽造に並びあきれてものが言えない。

 国の33行政機関のうち、約8割の27機関で不適切な障がい者数の算入があったことを国が認めた。今年4月から、法定雇用率は国が2.5%となっているが、1.19%にすぎないことが分かった。

 一番ひどいのが国税庁。従来1411.5人(2.47%)を雇用していると報告していたが、これが1022.5人が不正で実際は389.0人(0.67%)でしかなかった。法の番人法務省では、802.0人(2.44%)を雇用していたとしていたが、実際は262.5人(0.80%)で、40年間も法律を無視していたことになる。

 官庁全体では、6867.5人(2.49%)と公表していたものが、3460人も少ない3407.5人(1.19%)で実に半数以下になる。

【官庁の本音は「障がい者を採用したくない」】
 問題が発覚した当初官邸サイドは、「事務的なミス」として各省の事務方での対応にとどめることを検討したといわれる。今回各省大臣からの弁明も、「対象範囲の勘違い」「解釈の仕方の違い」という趣旨が続いた。

 こんな弁明は、民間では到底許されない。法律・ガイドラインに明記されていることだから。法定雇用率を達成できない企業は、不足1人につき月5万円(年間60万円!)を国に納めなければならない(100人超の企業)。さらに社名を公表されることもある。

 企業は努力し、昨年6月1日時点では、対象企業全体の雇用率は1.97%で雇用者は約50万人。当時の法定雇用率2.0%にほぼ達していた。

 国が、法令上のルールを長年「無視」していたのは、明らかに「できれば障がい者を採用したくないから」だ。だから今回の問題の根は深い。

【本人の申告のみで障がい者にカウントも】
 職員本人が、がんや糖尿病などと申告すると、これを障害者数にカウントしていたケースもあったという。「身上申告書」に書かれた病名や指定医以外の診断書を見て、人事課が「障がい者」と判断していた。

 担当者が、法令で認められていない書類を見て「障がい者」と判断する運用も。本人に無断で雇用率に算入していたケースも多い。「障害者雇用促進法」では、「障害者手帳」などで確認するようはっきり求めているのに。

 法施行当初は身体障がい者に限っていたが、98年から知的障がい者、今年から精神障がい者が加わった。身体と知的の重度の場合は「2人」、重度以外で短時間勤務は1人を「0.5人」と数える。

 障がい者を雇用すると、仕事の指示などで配慮が必要となる。周りの職員の負担が増えるという懸念がベースにある。それで実際は各種手帳もなく障がい者ではない人をカウントして数字を見せかけようとする。

 心身に障がいがある人達の働く機会を保障し、地域で普通に暮らしていける社会を目指す、真の共生社会実現という法の理念とはかけ離れている。

【今後の対応が心配】
 国は法定雇用率達成のため、各省庁はできる限り年内に達成するように要請。難しい場合は、来年中に達成できるよう求めている。

 心配は、これまで偽装して算入するため採用していた沢山の人たち。無言の圧力で退職に追い込もうとするのではないか。更に大量の障がい者を雇用する必要があり、環境の整備不足、ミスマッチが生じることが十分予想される。これまでの採用試験で、本来なら合格していたはずの障がい者の処遇をどうするのか。

 官房長官は会見で、「障がいのある方の雇用や活躍の場の拡大を民間に率先して進めていく立場として、あってはならないことと重く受けとめており、深くお詫び申し上げたい」と謝罪した。

 食品偽装や鉄鋼の測定値偽装など最近民間大企業の偽装・粉飾が後を絶たない。企業は、トップが責任を取り辞職するケースがほとんど。日本国の行政最高責任者は、財務省の公文書偽造を含め今回の問題もあり、民間のようにその責任を取って辞任しないのだろうか。

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