「薬用石けん」の不安

【「殺菌」「抗菌」「薬用」を信じて】
 病院から帰宅したり、ほこりだらけの外出先から帰宅すると、「薬用石けん」でしっかり手を洗うのが私の習慣になっている。それが「ちょっと待って」の声があり、驚いた。

 昨年9月2日米食品医薬品局(FDA)は、抗菌作用があるトリクロサンなど19成分を含む商品について、国内での販売を1年後に禁止すると発表した。EUの欧州化学機関(ECHA)でも、その1年前に禁止の決定がなされている。

 直後の9月7日菅官房長官は、「同様の成分を含む商品の確認を早急に実施し、とるべき措置について検討していく」と表明した。

 厚労省も、同じ成分を含む薬用せっけんについて、他の成分への切り替えを製造販売会社に促す通知を都道府県に行った。

【殺菌効果が確認できず健康被害も】
 「ばい菌に効く」として広く使われる薬用せっけん。FDAは「普通の石けんよりも病気や感染症に効果があるという根拠が示されていない」とし、「長期間の使用で安全性が検証されていない」と警告。「トリクロサンが細菌を殺す仕組みが抗生物質に似ていて、長く使用すると薬剤耐性菌が出てくる可能性」も指摘した。

 普通の石けんは、油・水・苛性ソーダでできている。これに殺菌成分を加えると「医薬部外品」となり、「薬用」石けんという表示になる。

 それが殺菌効果が証明されず、健康被害につながるとすれば問題だ。国内では、主にトリクロサンとトリクロカルバンが使われるが、これまで延べ800品目が承認され、今も50~100品目が流通しているとされる。

 薬用石けんに限らず、汗拭きシートやハンドソープ、歯磨き粉、化粧水、シャンプー、家庭用洗剤などにも使用されているが、薬用石けん以外には触れられておらず、どう指導されるのかグレーだという。

【感染症のリスク増加など】 
 最近の研究でトリクロサンの人体への影響について、次のように言われている。
①感染症のリスクの増加
②腸内細菌叢(そう)の変化と免疫低下
③抗生物質耐性菌の増殖
④環境汚染

 トリクロサンは、皮膚や口を経由して簡単に体の中に浸透する。黄色ブドウ球菌の定着増殖や、腸内細菌の変化と免疫低下が起こってはたまらない。下水道から流れて生態系全体に環境汚染を進めているともいわれる。

 薬用石けんを使っても短時間洗っただけでは皮膚の常在菌はほとんど減らない、普通石けんで十分効果があるとは知らなかった。これから業者がすべての製品でどこまで成分の切り替え対応をしてくれるものか、注視する必要がある。

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